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――携帯の鳴る音。






『あー、砂川? 俺俺』
「誰だよアホか死ね!」
『ジョーダンにいきなりキレて返すなよお前……』
「ウッセ、つまんねェんだよテメェのジョーダン。切るぞ」
『話聞けよ!』
「ンだよ」

『……機嫌悪ィのな』
「分かってンじゃねェか切るぞ」
『待てってボケが!』
「ボケはテメェだろうが!」
『うるせ話進まねぇだろ五分くらい寄越せよ!』
「三十秒」
『死ねマジで!……なぁ、二上って覚えてっか』
「フタガミ? 知らねェ」

『あー、あんま目立たねぇヤツだったからな。それがさぁ、何かオカシーんだよ』
「知るか。殴っとけ」
『殴っても治んねーんだよ』
「殴ったのかよ。アホか」
『今お前が目の前にいたら殴りかかる自信あるぞクソ。いや何か、スゲー怯えてるって言うん?』
「クスリでテンパってンじゃねぇの、ほっとけよ」
『いや、まあ、なんか、そうっぽいんだけどな……』
「ンなモン俺に言ってどうすんだよ」

『……何かさー、ユーレーが見えるって……』
「あ?」
『そいつこないださぁ、バイクで犬轢いちゃったらしいんだわ』
「で?」
『まー、ヒトじゃなくて犬だろ? 後始末メンドクセェし、人もいない夜道だったしでそのまんまにして帰ったんだと』
「…………」
『でよ、すっかり忘れてその道通ったら、同じ犬がいるっつーのよ』
「……グーゼンじゃねェの」
『俺もそう言ったんだけどさー。話聞いて次の日見に行ったヤツらが、マジでいたって。それでもう完全ビビっちゃって、家から出てこねーんだよ』

「……何でそれ、俺に言うンだよ」
『あ? こっちにいる時お前、こういう話マジで聞いてただろうが。スキなんじゃねぇの?』
「別にスキなワケじゃ……ああいや、ドコだよその道」
『チューガクん時に溜まってた駐車場あんだろ? あそこの前、花屋の通り、山の方に向かうヤツ』
「ふーん……」

『なー、こういう時どうしたらいいんだろーな。つーかマジこれユーレー?』
「――何だ、テメェまでそんな話でビビってんの? ッケケケ、面白れー! ビビりか!」
『な、誰がだよ!』
「わざわざ電話かけて来て何言うかと思ったらユーレーの話かよアホクセェ! ききっ、腹イテェな!」
『……あー、分かってるっつーのバカ! 笑うんじゃねぇよ!』
「ヤッベェ受けた。登録名ビビリに変えといてやるよ!」
『死ねクズ!』


――罵倒と共に切られる通話。




時計を見る。
日曜の午後、電車で向かえば夕方辺りには着く。
人目に注意するならその辺りのが丁度イイんじゃねェの。
笑ってカッターを引き出して音を鳴らす、チキチキチキヂリ。
予報にも引っ掛からない、襲い掛かっても来ないなら、それはきっと大して強くない。
下手をすれば花を捧げられた程度で消えてしまう様な弱っちいモンなのかも知れねェ。

でも、だからこそ、行くンだろ。

自分より弱いのがいたら安心できる、当たり前の理屈。
ゴースト相手には刃物を使っても文句は言われねェし法にも引っ掛からない。
徹底的に踏み潰せる。
手に入るのは薄っぺらい優越感。
片手に持ったカッターを鳴らす。

――まァ、これがクズの思考なのは間違いねェな。

財布とカードをポケットに突っ込んで立ち上がった。


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気が向いたら。 別に面白かァねェぞ。
プロフィール
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砂川 義春
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PBW:TW2、シルバーレインPC、砂川義春の記録。

上記イラストの使用権は義春PL、著作権は七夕絵師、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有。
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